時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が、時効が成立したことを主張することを言います。
時効による権利の取得・消滅は、法律の定める時効期間が経過しただけで自動的に効力が生じるものではありません。原則として、当事者が時効を援用しない限り、時効の効果は発生しないものとされています(民法第145条)。
つまり、債権者に対して、時効の援用を主張することではじめて支払い義務は免除されます。
時効の援用は、裁判において主張することもできますが、裁判外で主張することもできます。
一般的には、債権者に対して内容証明郵便を送付することにより時効の援用を主張します。
なお、時効の援用は「相対効」とされており、援用した者だけが時効の完成を主張することができ、援用しない者についてまで時効が完成するわけではありません。
消滅時効と取得時効
時効には、消滅時効と取得時効があります。
消滅時効とは、一定期間、権利を行使しない場合は、その権利が消滅してしまうという制度のことです。
取得時効とは、他人の物を一定期間継続して占有する者をそのまま所有者として認めることをいいます。また、所有権以外の財産権を一定期間継続して事実上行使する者をそのまま権利者として認める際にも使用されます。
消滅時効の成立には、債権の種類によって年数が異なります。
消費者金融などの商行為によって発生した債権(商事債権)は5年です。(商法522条)
一方、個人間の売買・貸付けで発生した債権(民事債権)は10年です。(民法167条1項)